吉村昭熱再燃中の私


ちょっと前にもここに書いたのですが、最近吉村昭さんの小説を読んでいます。
三十代の頃にたまたま『冬の鷹』を読んで感銘を受け、
そのあと次々に文庫本を十数冊読みました。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_20533915.jpg


















比較的最近、図書館で講演のCD『空襲の記憶』を借りて聴いたり、
エッセイ『東京の下町』を読んだりはしたのですが(どちらもおすすめです!)、
小説は長らくご無沙汰していました。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_20540924.jpg


















何がきっかけだったかもう覚えていないのですが、
少し前に新潮文庫『大黒屋光太夫』上下巻を読んだところ、
その書きぶりにすっかり魅了され、私の吉村昭熱が再燃。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_20543740.jpg















そのあと、新潮文庫の『羆嵐』を読み、今同文庫の『島抜け』を読んでいます。
もっと正確に言うと、『島抜け』所収の三編のうちの「島抜け」「欠けた椀」は読み終え、
「梅の刺青」を読み始めたところです。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_20565837.jpg


















このところ読んでいて意外に思うのは、知らない言葉や漢字が結構出てくること。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_20401924.jpg










なぜ意外に思うかと言うと、かつて十何冊か読んだ頃には
そのようなことがあった記憶がないのです。
今よりも当時の方が知っている言葉や漢字が多かった?
いや、そんなはずはないのです。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_20473582.jpg










気にならずにただただ夢中で読み進めていたということなのか。
当時は今と違って仕事に追われる中で寸暇を惜しんで読んでいたので
そうならざるを得なかったのかも知れません。
吉村昭熱再燃中の私_f0405897_21013618.jpg












今の私は結構ヒマ、とりわけこの数か月は仕事が途切れており、
結構ヒマではなく、たんにヒマ。
そういう状況だとこういうことになる、そういうことなのかもしれません。
で、知らない言葉や漢字に出くわすと、扉に鉛筆でメモしておき、あとでまとめて調べています。
読んでいる途中でいちいち調べるのは億劫だし、何より興がそがれる気がするので。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_21043845.jpg











その調べる作業、結構面白い。
自分の無知に呆れてしまうし、調べた結果をすぐに忘れてしまうに決まっているのですが、
未知が既知に変わる瞬間が実に楽しいのです。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_21084853.jpg










恥を忍んで『羆嵐』でのその例を少しあげますと――

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_21091696.jpg


















 13頁 牡丹雪 粉雪 
  私は牡丹雪と粉雪のそれぞれがどんな雪か知りませんでした。 
  牡丹雪は水分が多くて一つ一つが大きめの雪で、
  粉雪は水分が少なくてさらさらした、細かい粉状の雪。
  
 28頁 鉞(まさかり)
  まさかりは金太郎絡みで知っていましたが、漢字でどう書くかを知りませんでした。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_21110230.jpg










 86頁 颶風(ぐふう)
  強く激しい風のこと。

 106頁 膂力(りょりょく)
  筋肉の力、腕力

言葉や漢字だけではありません。
「炉に鉄鍋をかけて鉛をとかし弾丸作りをはじめた」(17頁)のように
自分の無知のせいで「えーっ?!」となる事柄も出てきます。
銃の弾丸が手作りできるなんてこと、全く知らなかったのです。

吉村昭熱再燃中の私_f0405897_21135656.jpg







分からないことだらけだと読む気が失せてしまいかねないですが、
吉村さんの小説にはそれらが絶妙の頻度で出てくるので、
今の私にとってはそれもまた魅力になっています。
  

Commented by norakoubou2426 at 2026-02-13 22:41
わたしも昨年吉村昭を夢中になって読みました。
「海も暮れきる」という作品。自由律の作風で知られる俳人、
尾崎放哉の最晩年の8か月を書いたもので、強烈な印象でぐいぐい読み進みました。
吉村は一つの作品を書くのに何年もかけて取材したり足を運んで調べたり
という作家だったそうで、そのことにも興味を持ち随筆も一冊読みました。
別な作品もと思いながらそれ以後読んでないのですが、chronoirさんの文章読んだら
また吉村昭の世界に浸りたくなりました。
別な本も待ってるし、いくら時間があっても足りませんね。
Commented by chronoir2023 at 2026-02-14 11:50
ノラさん、コメントをありがとうございます。

吉村さんの小説、『海も暮れきる』を含めて未読のものがまだまだ沢山あるので、
これからどんどん読んでいこうと思っています。
ちなみに私が好きな小説家がもう一人いて、それは篠田節子さんです。
Commented by kepitaro at 2026-02-14 17:11
私も吉村昭好きです。たくさんは読んでおりませんが。
出会いは「仮釈放」今でもこれが一番。
上に書いてらっしゃる「海も暮れきる」は友人が貸してくれて何度も読み返し。
他も読みましたがタイトルが思い出せない。。。内容も忘れて。
読んでも無駄な脳になってしまったのかも。
歴史小説が苦手で現代物が多いです。
Commented by chronoir2023 at 2026-02-14 18:03
kepitaroさん、コメントをありがとうございます。
自分の好きな作家を好きと言われると嬉しいものだと実感しました。

今確かめたら『仮釈放』、書棚にあったのですが、読んだ記憶がありません。
昔買った十数冊の文庫本のうち、これのみ積ん読になっていたようです。
今読んでいる「梅の刺青」を読み終わったら、これを読もうと思います。
私、読んだそばから忘れますので、読み始めたら既読だったと気づく可能性もありますが、
「再読以上こそが読書の醍醐味」と思うようにしていますので、もしも既読だったと気づいても、
迷わず読み続けるつもりです。
名前
URL
削除用パスワード
by chronoir2023 | 2026-02-13 21:33 | 読書 | Comments(4)

日々の暮らしの中で感じたことや考えたことを書きます。


by chronoir
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31