私ひとりの私にのみ意味を持つ言葉


明日から三週間半ぶりに仕事。
期間は一か月ほど。
ですから明日からは少々忙しくなりますが、今日まではヒマ。
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昨日草刈りをしたので今日は畑に行く必要はなし。
買物には出かけましたが、今日は薄曇りの空で珍しく空見を満喫できなかった。
不満が燻っている上に、気力がわかない。
そういうときは、ゴロ寝か書棚の愛読書を適当に引っぱり出して拾い読みするかします。
で、今日はまず後者を選択。

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手に取ったのは、白水社の<イデー選書>の一冊である『偶像の黄昏/アンチクリスト』。
西尾幹二の訳による1991年発行の本です。
買った当時は夢中で通読しましたが、その後は線を引いたところを拾い読みするだけ。
それだけで十分に面白い。

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頁を雑に捲って今日手が止まったのはここ。

 弱者たちは自ら弱者と名のらない。「善人」と自称する。
 (同書179頁)

咄嗟に思いました、「困るんだなぁ、こういうの……」
困るから立ち止まってしまい、立ち止まってしまうからさらに困る。
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この文言を目にして私を襲う心の動きを言葉にしたくなるのですが、
それが難しく、面倒臭く、でもやはり言葉にしてすっきりしたく、
でもなおそれができず、<困る>の合わせ鏡が生じてしまいます。
幸か不幸かその事態は、数十分か数時間後の忘却によって霧散してしまうのですが、
そうなるまではイライラしながら時の経過を待たなければなりません。
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ならば今日は、なかったはずの気力を振り絞って、なぜ自分がこの言葉に困るのか
いくらかは考えてみようと思います。

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まずこの言葉は、目にした瞬間、私の胸に響きます。
最初に見たときもそうでしたし、その後もそうです。
なぜなら、自分自身へのかなり強い戒めになるからです。
弱いがゆえに悪をなさないにすぎない、少なくともそうかもしれない自分を
たったそれだけのことで自分を善人と思い込むという愚に陥ることを
この文言は抑止してくれます。
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で、瞬間が過ぎ去ったあとはどうか。
微妙な気持ちになります。
ニーチェ先生、こういう言葉を公言していいのですか?
私の中にそのような疑問が起こる、あるいは再燃します。

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この文言はこの私 chronoir には意味を持つ。
ということは、各人の私には意味を持ちうる。
言い換えれば、各人の私ひとりの私には意味を持ちうる。
各人の私ひとりの私が、自分ひとりに向けた言葉として受け取るなら意味を持ちうる。
そこに留まるなら意味を持ちうる。
問題は、思考には惰力疾走に向かう傾向があること。
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自分ひとりに向けられた言葉として感じ入ったその言葉は、
そういうものとして留まっていれば当初の意味が保持される可能性があります。
しかし、思考が持つ上記の傾向によりその文言を他者にあてはめるということが起こりやすい。
そうなると自分を思考の外に解き放ってしまい、他者をその言葉で見始めます。
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そう、だからこそ、「弱者たちは……」は危険な言葉。
そして、そういう言葉は他に山のようにあります。
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ニーチェ先生、この種の言葉、言って欲しくなかった、
とともに言ってくれてよかった、
言ってくれてよかったが、言って欲しくなかった。
結局また隘路にはまり込むことに……。


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by chronoir2023 | 2025-07-11 22:56 | 読書 | Comments(0)

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