ベートーヴェンとは俺のことかとベートホーフェン言い


昨日一昨年の6月に書いた記事の修正版をアップしたのですが、
せっかくなのでそこでとり上げた本のタイトル絡みのことを
今日は書こうと思います。
「ベートーヴェンとベートホーフェン」って何のこと?
と気になった方がおられないか気になりますので……。
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クラシック音楽に興味のない方でもベートーヴェンの名前を知らない方や
交響曲第5番の出だしの「ジャジャジャジャーン」を耳にしたことがない方は
まずいないでしょう。

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石井宏著『ベートーヴェンとベートホーフェン』(七つ森書館、2013年)によると、
ドイツ語の辞書ではその発音は「béːthofən」となっているとのこと。
今、手もとにある古い古い『現代独和辞典』(三修社、1979年)を見てみると、
「béːthoːfən」となっていて、一箇所短音長音の違いがありますが、上記と大同小異。
また、ネットで『小学館 独和大辞典』を見ると「béːthoːfən, ..vən」となっています。
「béːthoːvən」もありとされているのが多少気になりますが、それはともかく、
「ベートホーフェン」が正しい表記というのが著者の主張です。

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一方、 Ludwig van Beethoven の Ludwigは、
ドイツ語の男性名として「ルートヴィヒ」のままでよいとして、
van どうか?

  ベートホーフェンは生前にはベートーヴェンではなく、正しく
 ファン・ベートホーフェンと発音されていた形跡がある。
 (中略)
  ベートホーフェンの父は一七九二年年十二月十八日にボンで死ぬが、
 教会の過去帳に記されている彼の名は、
  Beethoff(ベートホフ
 となっており、語尾は v ではなく f と発音されていたことがわかる。
 (『ベートーヴェンとベートホーフェン』10~11頁、太字は引用元では傍点付)

著者によると、 beethoven はオランダ系なので、
van はオランダ風に「ファン」と読むのが正しいとのこと。
なので、「ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン」ではなく、
「ルートヴィヒ・ファン・ベートホーフェン」ということになります。

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Vincent van Gogh が
かつては「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ」とされていたのに、
昨今は「フィンセント・ファン・ゴッホ」とされることが多くなったことを思えば、
なるほどと思える話です。

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なお、「ヴィンセント・ヴァン」は「フィンセント・ファン」になっても、
「ゴッホ」をオランダ語風に「ホッホ」とか「ホーホ」とかにする表記は、
ごくたまにしか見ません。
「ゴッホ」に比べれば「ヴィンセント・ヴァン」は使用度が低いので変えられても、
「ゴッホ」はあまりにも知れ渡りすぎていて変えようがない、ということでしょう。

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かつては「ドヴォルザーク」とされていた新世界交響曲の作曲者は、
今ではしばしば「ドヴォルジャーク」とされるようになりました。
その方が原語であるチェコ語の発音に近いというのが理由です。

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さて、「ジャジャジャジャーン」の作曲家の名前は今後どうなるのでしょうか。
私は石井さんの説には説得力があると思っています。
つまり、本来はベートーヴェンではなく、ベートホーフェンなのだろうと思います。
でも、「ゴッホ」同様、あるいはたぶんそれ以上に「ベートーヴェン」
あるいは「ベートーベン」は知られすぎています。
名前の表記がどうなろうと作品の質が変わるわけではありませんが、
気になる問題ではあります。


Commented by nonbiras at 2025-05-25 22:22
ホッホやホーホはフクロウみたいだし。
ドボルジャークはなんか訛ってるみたいだし。威厳も感じられない。
べートーホーフェンは言いにくいし。
・・・なんか失礼なことばかり言ってるみたいでスミマセン。

べートーホーフェンで思い出しました。
父方の祖母は、お菓子のことを「くわし」と言ってました。
表記ができないから大きな「わ」と書きましたが、発音は
「カエルの歌が聞こえてくるよ クワッ クワッ クワッ クワッ
ゲゲゲゲ ゲゲゲゲ クワッ クワッ クワ♪」のクワです。
これで通じるかなあ(^-^;

こういうのなんて言うのか気になって調べてみましたら
合拗音というらしいです。
祖母は弘前の人です。父も「くわし」って言ってました。
今では死語なんじゃないかなあ。

知ってるのは私のようなロージンくらいだと思います(ΦωΦ)




Commented by chronoir2023 at 2025-05-25 22:50
のんさん、コメントをありがとうございます。

>・・・なんか失礼なことばかり言ってるみたいでスミマセン。
私自身は原語に「忠実な」表記に拘りはありませんのでなんら失礼には感じません。
昔小学校の音楽教育関係の仕事をしていたので、
その頃だったら面倒なことになっていたところだとほっとしています。
ちなみに私は現在もベートーベン、ドボルザーク、ゴッホで通しています。

>父方の祖母は、お菓子のことを「くわし」と言ってました。
かし(菓子)の旧かなは「くわし」ですから、お祖母さまやお父さまは、
古風な言い方をされていたということのように思われます。
Commented by 1117_yumeoibito at 2025-05-25 23:38
面白く拝読させて頂きました。
明治時代の作家、斎藤緑雨の「ギョエテとは、俺のことかとゲーテ言い」という
川柳を思い出しました!
Commented by chronoir2023 at 2025-05-26 07:58
yumeoibitoさん、コメントをありがとうございます。

タイトルはその川柳をひと捻りしてもじったつもりだったのですが、
「ギョオテ」「ゲーテ」と違って字余りが過ぎて川柳になっていませんね……。
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by chronoir2023 | 2025-05-24 22:28 | クラシック音楽 | Comments(4)

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