日本神話は弁証法(?)


自宅で湯船に浸かってぼーっとしていたり、
一人で外に出て特に考えごとをするでもなく歩いたりしていると、
ずっと昔に考えたことや本で読んだことが
ふいに頭に浮かんでくることがあります。

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たいていはどうということもないようなことで
「今さらなんでまたそんなつまらぬことを……」で終わるのですが、
時には面白く感じるようなこともあります。

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一昨日の午前中、畑仕事をして帰ってきて、
買い物に出るまでの間風呂に入り、
十数分間湯船に浸かっていたのですが、
「日本の神は祈られる神であるとともに祈る神でもある」
という言葉が何の脈絡もなく頭に浮かびました。
その心は、日本には究極の神がいない、全能の神がいない、ということ。

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風呂から上がったあと自分の記憶に対する疑いがわいてきて、
その言葉の出典であるはずの丸山真男の『日本の思想』を書棚から引っぱり出しました。

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そして、丸山のその記述のネタ本であろう和辻哲郎の『日本倫理思想史』も。

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どちらも開くのは四十数年ぶり。

 和辻哲郎が分析しているように、日本神話においては祭られる神は
 同時に祭る神であるという性格をどこまで遡っても具えており、
 祭祀の究極の対象は漂々とした時空の彼方に見失われる。
  (丸山真男『日本の思想』岩波新書、1961年、20頁)

 神代史において最も活躍している人格的な神々は、後に一定の神社に
 おいて祀られる神であるにかかわらず、 不定の神に対する媒介者、
 すなわち神命の通路、としての性格を持っている。それらは祀られる
 とともにまた自ら祀る神なのである。 (中略)祀られる神が自ら祀る
 神であるということを最も顕著に示しているのは、神代史の主神天照
 大御神の物語である。(中略)この大神は天上の国の主宰者として自ら
 神を祀っているのであって、他からの祭祀を受けているのではない。
 (和辻哲郎『日本倫理思想史 上巻』岩波書店、1979年、59頁。傍点を太字にかえました)

私の記憶、間違っていました。
「祈る」じゃなくて「祀る」だった。
でもまあ、当たらずとも遠からず、ということで……。

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と自分で自分をフォローして、納得。

いずれにせよ、確かに少なくとも『古事記』において、
天照大御神(あまてらすおおみかみ)は<うけい>をやります。

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うけい競べの相手は須佐能男命(すさのおのみこと)。
絶対神ならばそんな占いの類いなどするはずがない。
そんなことをする必要などありはしまい。
(石川淳『新釈古事記』ちくま文庫、1991年、30頁など参照)

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究極の神がいないって、まるで弁証法のよう。

とそこで、思考がさらに彷徨い始めます。
待てよ、三位一体なんて言ってるけど、
三つのペルソナの一つであるはずのイエス・キリストは
やはりその一つである父なる神に祈るではないか。

 三時ごろ、イエスは大声で叫ばれた。「エリ、エリ、レマ、サバクタニ。」
 これは、「わが神、わが神、なぜ私をお見捨てになったのですか」という
 意味である。
  (聖書協会共同訳 新約聖書』マタイによる福音書 27章 46節)

これを「祈る」だと記憶していたのは、これまた私の記憶違い。
でもまあ、これも当たらずとも遠からず、でしょう……。
それにしても、可哀想なイエス様。
キリスト教徒でもないくせに、イエスの神に対するその言葉をあらためて目にして、
私はなんともやるせない気持ちになりました。

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ということで、本日は思考を彷徨わせた挙げ句、
やるせない気持ちに行き着いてしまいました……。



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by chronoir2023 | 2025-04-14 22:17 | 読書 | Comments(0)

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