ラフカディオ・ハーン その8
2025年 01月 10日
昨年の10月末日の<その7>で中断していた
<ラフカディオ・ハーン>の続きです。
昨年の9月に『八雲の妻 小泉セツの生涯』(長谷川洋二、今井書店、2014年)を
大変面白く読み、手もとに置いておきたくて買おうと思ったのですが、
驚くほど高額で売られている古本しかなく、諦めました。
いったん返してまた借り、ここに何か書こうと思っているうちに日が経ち、
ならば貸出延長をしようとしたら、予約が入ってしまっていてできず、
ハーン<その8>を書く機会を失っていました。
数日前に久々にチェックしたら借りられる状態になっていたので予約し、
今日借りてきました。
その本で感銘を受けたことや興味深く感じたことを
このあと何回かに分けて取り上げていければと考えています。
間が空きながらのことになる可能性大ですが、
とにかくやってみます。
松江城のお堀端にある小泉八雲記念館
今日取り上げるのは、「陰腹(かげばら)」。
私はこの言葉をこの本ではじめて知りました。
八雲(ハーン)の妻セツの母方の祖父塩見増右衛門は、松江藩の江戸家老を務めた人。
その主君である九代目藩主松平斉貴(なりたけ)は、開明的な人物ではあったものの、
趣味への入れ込みようが度を越え、そのせいで藩の財政が逼迫、
しかも、幕府の定めに抵触するようなことまでしていたとのこと。
時はすでに幕末。激動の時代になりつつある頃です。
江戸家老になった増右衛門は二度にわたって諫めるも、効果なし。
で、三度目の諫言に及ぶ。
その際の増右衛門の「ただならぬ顔色」に驚いた斉貴が、
下がった増右衛門を呼び戻すべく人を向かわせると、
家老の詰所ですでに事切れていました。
彼は主君の御前に出る前に陰腹を切り、切った腹を
白木綿一疋(いっぴき)で固く捲きつけて諫言したので
あって、まさしく死をもって主君を諫めたものである。
時に嘉永四年(一八五一)十一月二日、セツが生まれる
十六年前のことであった。(52頁)
長谷川さんのその本によると、
斉貴はそれによってようやく目が覚め、翌年早々に松江に帰国、
その翌年には養子に藩主の座を譲って出家したとのこと。
言葉通りの命をかけた諫言が功を奏したことになります。
全く以て凄い話。
『日本国語大辞典』で「陰腹」を引くと、こうあります。
人形浄瑠璃劇・歌舞伎の演技、演出で、観客に見えない
舞台の陰で切腹し、それを隠して舞台に現われ、苦痛を
こらえて述懐する演技、または、場面。
もしも『八雲の妻』を読む前からこの言葉を知っていたら、
実際にそれをやった人がいたと知って、
別の驚き方をしたと思います。
なお、その本にはこの増右衛門が
黙阿弥の歌舞伎狂言『天衣粉上野初花(くもにまごううえののはつはな)』の
登場人物の一人高木小左衛門のモデルになったとあるので、
辞書の説明は不十分ではないかと思ったのですが、
歌舞伎に疎い私がネットで調べた限りでは、
作中の小左衛門は主君に手打ちにされることを覚悟で諫言しはするものの、
陰腹を切るわけではないので、私の早とちり。
さらに調べると、浄瑠璃『新薄雪物語』に陰腹が登場しているらしい。
その初演は寛保元年(1741年)。
増右衛門の死は、その百年以上後です。
長谷川さんによると、増右衛門の死は、芝居になったそう。
この増右衛門の壮烈な死は、 公には急病による死として伏せられた
けれども、すぐに江戸市中に知られて、『三本杉家老鑑(かろうかがみ)』
という芝居に組まれもした。 セツはと言えば、繰り返して語り聴か
されたこの物語の、英雄的で悲壮な趣(おもむき)に感じ入ったのである。
(52頁)
となると、疑り深い私としては、
セツのお祖父さんの陰腹、今でいう盛った話じゃないの?
という気がしなくもない。
ですが、まあ、そこは、
来月から松江市民のひとりとなる私でもありますから、
真摯にして豪胆なる大先輩の事績として信じることにしようと思います。
陰腹を初めて知りましたが、「八雲の妻」の内助の功が薄っすらと見える気がします。
やはりそれなりの出自を持ったお方でしたか。
やはりそれなりの出自を持ったお方でしたか。
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tanataliさん、コメントをありがとうございます。
『八雲の妻』を読むと、幕藩体制の崩壊によって多くの武士の家が悲惨な境遇に陥ったことがわかります。
セツさんが育った家も生家その例にあたり、家族を支えるためにセツさんは、
「妾」にされることを覚悟してハーンの一人住まいの家の住み込み女中となります。
女中となって間もなく、ハーンはセツさんに好意を抱くようになり、二人は結婚します。
私は、ハーンにもセツ夫人にもついつい感情移入してしまいます。
『八雲の妻』を読むと、幕藩体制の崩壊によって多くの武士の家が悲惨な境遇に陥ったことがわかります。
セツさんが育った家も生家その例にあたり、家族を支えるためにセツさんは、
「妾」にされることを覚悟してハーンの一人住まいの家の住み込み女中となります。
女中となって間もなく、ハーンはセツさんに好意を抱くようになり、二人は結婚します。
私は、ハーンにもセツ夫人にもついつい感情移入してしまいます。
by chronoir2023
| 2025-01-10 21:28
| 読書
|
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