ボールペンで書き込むのは自分の本だけにして!


少し前にここに本に線を引くことに纏わることをあれこれ書いたのですが、
書いた後で、半世紀も前の「事件」のことを思い出しました。

ある日姉が私の持っている芥川龍之介の文庫本を貸してくれないかと言うのです。

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当時、姉は都内の大学の国文科の学生で、
私は、本好き文学好きのひねた高校生でした。

理由をきくと、自分が読むためではなく、
知り合いの男子学生に頼まれたとのこと。

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大学の授業で提出するレポートを書くのに必要とのことでした。
その男、文庫一冊ぐらい自分で買えよ、とは思いましたが、
自分同様、お金がないんだろう、まあいいか、ということで、
貸しました。

しばらく経って返された本の「解説」には線が引かれていました。
しかも、ぞんざいに引いてある上に、一部は黒ボールペンが使われています。

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言葉を失いました。
腹が立つというより、悲しかった。
本がかわいそうだった。

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私が本に線を引き始めたのは、大学生になってからです。
それまでは本に線を引くなどということは考えられなかった。
僅かな小遣いを使って買っているということもあり、
どの本も大事にしていました。

そんな私には、他人から借りた、しかも又貸しされた本に線を引くというのは、
理解不能の行為でした。
鉛筆でもびっくりですが、ボールペンで書き込むとは!

しばし絶句の後、姉に文句を言いましたが、
姉は困った顔をするだけ。

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その後、その男に何か文句を言ったのかどうかわかりません。
また、どの程度の間柄だったのかも不明です。

実は、私は今日の今日まで、その本は捨てたと思っていました。
持っているのが辛くて、そうしたと思っていたのです。
記憶違いでした。

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念のため書棚の芥川の文庫本を一冊ずつ見たら、ありました。

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当時の私は勿体なくて捨てられなかったのだと推測されます。
線が引かれているのは「解説」だけで、本文にはなかったので、
何とか自分で自分を納得させたのだろうとも。

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大学生になって間もなく、本に対する考えが変わりました。
自分が買った本は、読み倒し、使い倒せ、
必要があれば線を引くなり書込みをするなりしろ、
その本を生かすも殺すも自由だし、お前次第だ。
当時本当にそう思ったのかどうか定かではないのですが、
今振り返る限りでは、そんな感じだったように思われます。
もっとも、今も当時も、ボールペンで引くことはしません。

この十数年、図書館で本を借りることが多いのですが、
線が引いてあるのをときどき目にします。

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なんと非常識な! と思いますし、自分は絶対にそういうことはしませんが、
さすがにボールペンやマーカーを使ったものは見たことがありません。

それにしてもその男子学生、なぜ本文には線を引かなかったのだろう。
さすがに小説本体に引くのは躊躇されたのだろうか。
それとも、面倒なので小説本体は読まず、
「解説」だけでレポートをでっちあげたのだろうか。

もう腹が立つこともなく、
そんな方に頭が向かってしまう今の自分を
他人事のように面白く眺めています。


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by chronoir2023 | 2024-08-04 19:49 | 読書 | Comments(0)

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