かつては聞えなかった「ぶんぶ」


妻が実家に帰っているので、いつもは妻がやっている作業を私がしています。
その一環として、普段は余り出ないベランダに出ることが多くなります。
洗濯物を干したり、植物への水やりをしたりしますので。

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妻がベランダで何かをするとき、
ガラス戸あるいは網戸をこまめに閉めはしないので
蚊が入ってくることが結構あります。

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こまめに締めればいいものをと思うことがあるのですが、
いざ自分がやってみると、なかなかそんなことできやしない。
勝手なものです。

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洗濯日和の今日、洗濯したものをベランダに干したのですが、
やっぱりこまめな人になれず、蚊に入られてしまいました。
机に向かって仕事をしていると、ブーンという音とともに私の顔の近くを断続的に飛び回ります。
小煩いといったらありゃしない。両手のひらでバチンパチンとやるのですが、なかなかやっつけられません。
それどころか、刺されました。全く忌々しい!

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忌々しがっているうちに或ることを思い出しました。

私は自分は耳が遠いと思ったことはありません。
少なくとも若い頃は人並以上に敏感な方だったと思います。
しかし、子供の頃、さらに大人になってからも結構長い間、
蚊の飛ぶ音を耳にしたことがなかったのです。

松平定信の寛政の改革を揶揄した歌を子供の頃知りましたが、
そのオモテの内容が私には解せませんでした。

 
 世の中に 蚊ほどうるさきものはなし
        ぶんぶといふて 夜もねられず


蠅や蜂が飛ぶ音は普通に耳にしていましたが、
蚊の飛ぶ音は聞いたことがなかったからです。

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子供の頃、今よりも蚊はずいぶん多かった。
刺される頻度も今よりずっと高かった。
それでも、蚊の飛ぶ音を聞いたことはありませんでした。

ところが、二十年余り前、四十歳代で結婚してしばらく経った頃にはじめて耳にしました。
布団に寝ていて顔の周りを「ぶんぶ」と飛ぶのです。
近づいたり遠ざかったりするので、大きくなったり小さくなったりします。
やっと静かになったかと思っていると、そのうちまたやってきます。

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その時はじめて「世の中に……」の歌のオモテの内容が腑に落ちました。
そして、それ以降は蚊の飛ぶ音が聞えるようになりました。
別に嬉しくはありませんが、捕まえる頻度が多少は高まるという利点はあります。

ちょうど今も左の耳に近づいてきました。音だけで分ります。
また捕まえられなかった……。

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見れども見えずということがあるように、
聞けども聞えずということだったと思われます。

いったんその像が見えれば、それまでは見えなかったそれがその後は見えるようになり、
いったんその音が聞えれば、それまで聞えなかったそれがその後は聞えるようになる。
そういうことなのでしょう。

他のいろいろな事象に通じることのように思われます。


Commented by saheizi-inokori at 2024-05-18 11:51
うとうととすると、ぶ~ん、ぴしゃッとたたくも痛いのは自分の頬だけ、嘲笑うようにぶ~ん、腹が立ったのも懐かしい子供のころです。
Commented by chronoir2023 at 2024-05-18 21:13
佐平次さん、コメントをありがとうございます。

子供の頃私もピシャッとやっていました。
でも、音ではなく姿のみを頼りにやっていたようです。
ぶ~んに苛つかせられている今の私からすると、なんとも不思議です。
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by chronoir2023 | 2024-05-17 20:04 | 不思議な出来事 | Comments(2)

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