隙間に咲くスミレ


もう三十年近く前、
「涙の数だけ強くなれるよ、アスファルトに咲く花のように」で始まる歌がヒットしました。
カラオケで一回だけ歌ったことがあります。

拙宅の狭い敷地の外側の縁、ブロック塀とアスファルトの隙間からよく植物が生えてきます。
妻が掃除のついでにたいてい抜いてしまうのですが、
今年の二月頃、緑が残っているのに気づいて、
「これは抜かないの?」ときいたら、
「それって、たぶんスミレだよ、わざと抜かないで様子見」
とのことで、ほっていました。

今日、ふと思い出して様子を見てみると、
咲いていました、一輪だけひっそりと。

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これって、スミレ?
妻がいればそうきくのですが、
母親が入院したため、もうまるひと月実家に帰ったままです。

やむなくネットで画像検索してみると、やはりスミレのようです。

あまりいい写真が撮れませんが、角度を少しだけ変えてもう一枚。

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小さく、弱々しく、でも、可憐に咲いています。
柄にもなく、いとおしく感じます。

恥ずかしいことに、私はスミレがどんな花か知りませんでした。
名前は知っていましたし、スミレ色がどんな色かもだいたいは分っていました。
でも、六十数年も生きてきて、スミレをスミレとだ分って見たことがありませんでした。

十代の頃から、モーツァルト好きの私は、
ゲーテの詩にモーツァルトが作曲した歌「すみれ」を知っていました。

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レコードでもCDでも実演でも満足できる演奏に出会ったことがないのですが、
作品自体は、素晴らしく、
切なく美しい曲、小さな宝石のような曲……、そう思っていました。

しかし、スミレがどんな花か知らないで、
「切なく美しい曲」だなんて、いい加減にもほどがある……!

羊飼いの少女に摘んでもらい、その胸に抱かれることを望んだスミレ。
しかし、少女はスミレに気づきもせず、踏みつけて通り過ぎてしまいます。
あの人に踏まれて死ぬのだから、私は仕合せ、スミレはそう叫んで息絶えます。

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ゲーテの詩だけでは足りず、
モーツァルトは最後に二行つけ足しています。
 
 Das arme Veilchen!
 Es war ein herzig's Veilchen.

 かわいそうなすみれ!
 可憐だったすみれ。

可憐なスミレの花。
ジジイの私が摘んで胸に抱くわけにはいきません。
せめて、踏まず摘まず、寿命を全うしてもらおうと思います。


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by chronoir2023 | 2024-04-10 20:16 | | Comments(0)

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