フォーレと冬の光


仕事に追われていると、ときおり無性に音楽が聴きたくなるのですが、
落ち着いて聴く余裕がありません。
仕事中に音楽を流すこともありますが、
BGMですから、聞き流しているだけで聴いているわけではありません。

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過度に集中が必要になると、どんな静かな音楽も邪魔になり、
音を消します。

ところが、ヒマになると、音楽を聴きたいという衝動が消えてしまいます。
ストレスが音楽を求め、ストレスレスは音楽を無用の長物にしてしまうということでしょうか。

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昨日、厄介な仕事が終わったわけではないのですが、
一区切りつきはしたので
夕食前にフォーレのチェロソナタ第一番の第一楽章だけ、
手と目を休めて聴きました。
ポール・トルトゥリエのチェロとジャン・ユボーのピアノによる演奏。
1962年の録音です。

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こういうとき、この音楽は胸にしみます。
聴いていると、硬直した心身がほぐされていくような感覚に襲われます。
あらためて、いい曲だと思いました。

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さて、今日、もう三日も外に出ていないので、
午前中は仕事をしないことにして、
妻と二人、山を越えてスーパーに買い物に行きました。

少し寒いですが、日向に出ると、かなり暖かい。

上り坂の途中にある廃屋の横を通ると、繁った草木が紅葉し、
光に照らされて、妙に心ひかれる光景が出現しています。
ずっと置きっぱなしにされている自転車とそれがつくる影まで
味わい深く感じられてきます。

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冬の光……。

ああ、これは、フォーレのチェロソナタの第一楽章の
第二主題が始まる箇所のようだ、そんなふうに思われました。

ベートーベンのバイオリンソナタ第五番は、だれが決めたのか、
「スプリングソナタ」ということになってます。
確かに、春を感じさせる明るく軽やかな音楽です。
寒さが和らいで身も心も和んでくる季節を思わせます。
色で言えば、黄色、桃色、明るい緑……。

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そして水色。

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フォーレのチェロソナタ第一番は、灰色の世界。
半曇りの冬の日を思わせます。
出だしからもう、心の襞にずんずんと入り込んできます。

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そして、それに身を任せていると、
激しい音楽が急におだやかになり、暖かな光が――

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そんなに気持が荒んでいたわけではないのです。
しかし、それまでひどく心が荒んでいて、
ああ、もうダメだというところを急に救われたような錯覚に陥り、
しばしその錯覚に身を任せてしまいます。

しかし、音楽はまた激しい灰色の世界に落ち込む。
そしてまた再び光が……。

救いの冬の光。

曲にラベルを貼って或るイメージで固定してしまうのは、
よい趣味と言えないことは承知しているのですが、
フォーレ作曲チェロソナタ第一番「冬の光」
などと言ってみたくなってしまいました。


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by chronoir2023 | 2023-12-14 21:47 | クラシック音楽 | Comments(0)

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