『星を継ぐもの』とクレーターの衝撃
2023年 11月 26日
昨日の「クレーター、クレーター」の続きです。
「クレーター、クレーター」というタイトルは、
語呂が似ているというだけの理由で
70年代末の米映画『クレイマー、クレイマー』をもじったのですが、
今見るとかなり無理があったように感じられます。
とはいえ、今さら変えるのは、さらにみっともないのでそのままにして、
今日は「その2」とはせず、新たにタイトルを付けました。
因みに、その映画のその邦題、もじり下手の私が言うのも何ですが、
これでよかったのだろうかと思ってしまいます。
原題の『Kramer vs. Kramer』は納得のタイトルですが、
昔この映画を見た時、見終わっても、この邦題の意味が分かりませんでした。
しかも、今や「クレイマー」と言えば、
今を時めく「claimer」と紛らわしく、邦題は、
「その電話、要注意だよ」
「なんで?」
「クレイマー、クレイマー」
「そうなの?!、どうやってなだめよう……」
というような会話を思い浮かべてしまいそうです。
さて、自分が撮った月の写真でクレーターを見て受けた異様な感じは、
この夏に読んだある小説に関係していたことに気づいたのですが、
その小説は、ジェイムズ・P・ホーガンの『星を継ぐ者』というSF小説でした。
その少し前、dマガジン内の週刊誌のどれかで、
その訳本が104も版を重ねていることを知り、
そんなに重版しているなら、面白いに違いない、
タイトルは聞いたことがあるようなないようなだが、
それほど読まれている本を読んでないのもちょっと何だし、
読んでも損はないだろうと、立ち読みも図書館で借りることもせずに、
ネットで注文して購入しました。
届いた本は、104版の後に出た新版の初版でした。
読み始めると、「プロローグ」が期待を持たせる内容なのに、
そのあとは、何だか会議みたいなことばかりやっていて、あまり面白くない。
理詰めっぽい話がやたらに出てきて、こういうのがSFファンには受けるのだろうか、
こんな読みにくい本が104版まで出て、さらに新版が出るとは、
日本のSFファンの読書力というのは凄い、などと皮肉交じりに感嘆する始末。
しかし、途中からだんだんと引き込まれ、
結局一週間足らずで読み終えました。
104+1版には、それでもびっくりですが、
面白かったことは間違いなく、あるという続編数冊も
そのうち読もうという気にさせるだけの魅力がありました。
月面調査隊が、月で宇宙服を着た男性の遺体を発見します。
そして、その遺体、5万年以上前のものという測定結果が出ます。(50頁)
この小説は、ミステリー小説仕立てになっており、
なぜ5万年以上前に月に人間がいたのかをはじめ、
数々の謎が提示されます。
最後にそれらの謎を解く説が示されるのですが、
それは、意外で、なおかつ、説得力のある説で、
この小説、凄い、と思わせられます。
五万年余り前、太陽系内の現在は存在しないある惑星内で
二大国間の戦争が起きます。
極限状況といいうる特殊な状況にあるがゆえに起こった戦争です。
双方ともすでに月に進出しており、
月から惑星に、惑星から月に、敵目がけて核爆弾を放ちます。
この小説は、月の表と裏では表面の岩石の厚さなどが異なるという事実を
うまく利用しています。
小説内では、現在月の表側に見られるクレーターは、
上記の戦争の遥か以前に隕石落下でできたものと、
上記の戦争で核爆弾によってできたものとがある、
ということが明らかになります。
われわれの調査によって、表側のいくつか
は核爆発によるものであることが判明した。
〔中略〕現在までに二十三のクレーターが
核爆弾によるものと断定され、なお今後の
調査に待つべきものは相当数に上る。(157頁)
月の裏側のことなど、いろいろ書きたいところですが、
内容にある程度以上踏み込むと、どうしてもネタバレになってしまうので、
ここまでにとどめます。
私が一週間ほど前、上弦の月を撮影し、
図らずも月のクレーターをはじめて意識的に見たとき、
無意識ながら、3か月ほど前に読み終わった小説が
私の頭にあったようなのです。
そうではければ、光と陰によって浮かび上がるそれらが、
私の目に、生々しく見えるにとどまらず、何かこう、
おぞましいもののように見えたははずはないと思うのです。
不思議です、読んでいるときには、
クレーターは文章中に出てくる用語の一つに過ぎなかったのです。
それが、今では実感のごときものを伴うものにかわりました。
それにしても、たった3か月前に面白く読んだ本を半ば忘れていた私。
いろいろと怖くなります。
気分はトホホです。
by chronoir2023
| 2023-11-26 21:35
| 読書
|
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