吉村昭の辛口ジョークを楽しむ


夜寝つきが悪いので、MP3プレーヤーで音楽や講演や朗読などを
聞くことがあるのですが、講演だと面白いのは、なんと言っても小林秀雄。
何十年も前に買ったカセットテープをMP3に変換して聴いています。

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現在はCD版がネットで買えますし、置いている図書館も結構あります。

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さんざん聴いて飽きて、もう聴くこともないかとその時は思うのですが、
しばらくぶりに聴くと、やはり面白い。
そのパターンを何度もくり返しています。

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志ん生親子の落語もよく聴きますが、それもまったく同じ。
オチも笑い所ももう十分知っているのに、
しばらくぶりに聴くと、やはり面白い。
そこだと分かっている箇所を心待ちにしながら聴き、
実際にそこに至ると、布団の中で思わず吹き出してしまうことさえあります。
困った、もう睡眠どころではありません……。

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名人の芸というのは凄いものだと思うのですが、
考えてみれば、私を含め、多くの人が、
愛聴曲は何度もくり返し聴いて楽しみ、
愛読本は何度もくり返し読んで楽しんでいるのですから、
不思議でも何でもないですね。

さて、昨夜久しぶりに、吉村昭さんの講演を聴きました。

数年前に吉村昭さんの講演CDがあることを知り、
神奈川県立図書館に1枚だけあったので借り、
データ保存してMP3プレーヤーに入れているものです。

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これもまた、非常に面白い。
軽妙で、ブラックで、サービス精神に溢れていて、
それでいて、理路整然としています。

考えてみると、吉村さんの歴史小説、
堅実で、緻密で、理路整然、という印象を受けますが、
多少の例外を除き、私が夢中になって読めるのは、
そこにしっかりしたサービス精神があって、
面白い小説になっているからでしょう。
しばらく読んでいないので、
近いうちにどれかを読み返して確かめようと思います。
もし違う答えが出ても、吉村さんの小説を読むのは楽しいので、
読んで後悔することはないでしょう。

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講演は、実に面白く、聴衆からは頻繁に笑い声が上がります。
この人の話、内容だけなく、それを語る声もいいのです。
声楽家風の朗々とした声ではなく、
少しドスのきいた、悪く言えばダミ声と言えなくもない声ですが、
よく通る上に滑舌がよく、非常に聞き取りやすい。
曖昧なところが一切ありません。

因みに、小林秀雄は声が冴えませんが、聞き慣れてしまうと、内容が面白いおかげで、
冴えなく聞えた声が妙に魅力的に聞えはじめてしまうのですから、不思議です。
一方、吉村さんのようにいい声だと、もう最初から文句なし。

で、その吉村さんの講演ですが、
そのなかからいくつか紹介したいと思います。
面白いので、そうせずにいられません。

枕にあたる部分のあとは、読者からの手紙の話。
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話し方が実に巧みで、ちゃんとオチまで用意されています。
これから聴く方の楽しみを奪ってはいけないので、ネタバレはやりません。

次に、戦争体験の話。
吉村さんは、生まれも育ちも東京の下町。
大空襲の後、隅田川の橋のたもとにかたまって浮いているたくさんの死体のことを
あっけらかんと語っています。
悲惨極まりない情景なのですが、実際の印象となれば、
そういうことでもあろうかと思わせられます。
ご本人もそのように説明しています。
悲惨が日常になり、無感覚になることの怖さが伝わってきます。

若い頃、結核で死の瀬戸際まで行った吉村さん、
当時最新の手術を受けて、命拾いします。
命に関わる話なのですが、軽妙に話されていて、
運命的なオチまであり、聴き入ってしまいます。
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子どもの頃、吉村さんは作文が苦手だったそう。
戦時中で堅苦しいテーマの作文ばかり書かされたが、
ある日の授業で「自由に書いてよい」ということで、
まさに自由に書いたら、教師から絶賛される。
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ところが、父親のことを書いたそれは……。
これもネタバレになるので、書くのは我慢します。

学習院大学の学生だった頃、大学内で寄席を企画し、
その寄席で一席を演じた志ん生の話も出てきます。
その時の志ん生の様子を聴いて、
志ん生って、やっぱりそうだったんだ、と思いました。

その寄席には、三代目春風亭柳好(この人、私は知りませんでした)も出演。
ところが、途中で高座から下りてしまいます。
なぜか。ヒントにならないヒントは「学習院」。
当時の皇太子、今の上皇の存在が……。

奥さんの津村節子さんの話も出てきます。
私は吉村夫人の小説は読んだことがなく、
今後も読むことはなさそうですが、
吉村さんが奥さんについて語る言葉は、
会場の聴衆も私も笑わせてくれます。

歴史小説家ならではの蘊蓄も語られ、
少なくとも私にとっては、そのひとつひとつが皆面白い!

やはりこの人、並の人ではないですね。
十数年前に79歳で亡くなってしまいましたが、
若い頃に亡くならなくて本当に良かった、
そう思います。


Commented by saheizi-inokori at 2023-11-20 12:19
残念ながら、世田谷区の図書館にはないようです。
せめて「冬の鷹」を読みましょう。
Commented by 20230507chronoir at 2023-11-20 21:03
saheizi-inokoriさん、コメントをありがとうございます。

世田谷区立図書館は、私もときどき利用しています。
吉村さんの講演CDは、そこを含めて常用している区立及び市立の図書館4館になく、
たまにしかいかない神奈川県立図書館で借りました。
Commented by rui-asami at 2023-11-22 10:26
おはようございます。わさわさと忙しい思いをしていまして、
久しぶりに伺いました。
あれーーー、小林秀雄氏の講演のカセットが図書館にある?
全く知りませんでした。落語家の方々のCDがあるというのは知っていましたが。
吉村さんの講演CDも、早速図書館に行って探してきたいと思いました。
お天気も良いし久しぶりに手賀沼あたりを散歩しながら
図書館に寄ってみます。
素敵な情報をありがとうございました。
Commented by 20230507chronoir at 2023-11-22 11:23
rui-asamiさん、こんにちは。

吉村さんのCDを置いている図書館はあまりないかもしれませんが、
小林秀雄のカセットテープ、あるいはそれをCDにしたものや
最初からCDで発売されたものは、結構あるように思います。
どれも面白いですが、「現代思想について」「文学の雑感」
「信じることと考えること」「ゴッホについて/正宗白鳥の精神」が
特におすすめです。
Commented by rui-asami at 2023-11-22 23:16
今日図書館に行ってきたんですがあったのは志ん生の
落語だけーーー借りてきました。
残念!小林秀雄については20才だったか、の時に「考えるヒント」を読み、自分と違っていた考え方に向き合い、
大変興味深く何度も読み返しておりました。
ネットで買えるんですね?探してみます。
ありがとうございました。
図書館では本であるかもしれませんね。聞きそびれました。
Commented by chronoir2023 at 2023-11-23 08:21
rui-asamiさん、コメントをありがとうございます。

図書館にありませんでしたか……。残念です。
小林秀雄の講演CDはアマゾン他ネットで買えますが、高いのが難点です。
本だと、新潮文庫の『学生との対話』に講演(その本では講義としていますが)が
2本載っていて、どちらもおすすめです。学生とのやりとりも、面白いです。
225頁ほどの文庫で、605円で買えます。
吉村昭の講演は、CDは中古しか買えないようですが、
ネットでデータで買うことはできるようです。
http://www.radiodays.jp/item/show/201377
志ん生の落語は、私は「大工調べ」「中村仲蔵」が特に好きです
Commented by rui-asami at 2023-11-23 09:19
ありがとうございます。
📚10年位前から緑内障になって字を読むことが無くなりました。
30分くらい読んでいるとかすんで見えなくなります。
なので、ゆっくり進めていきたいと思っています。
若かった時の文章を読む
ときめきが戻ってくるでしょうかーーー
楽しみです。
Commented by chronoir2023 at 2023-11-23 09:46
rui-asamiさん、コメントをありがとうございます。

もともと目がよくない上に、仕事で酷使していますので、
私も若い頃のように多くは読めません。
それで、結構前から図書館で借りられる朗読CDや
YouTubeにある朗読を活用しています。

例えば「西村俊彦の朗読ノオト」。重宝しています。
https://www.youtube.com/user/byoubyouleo
または
https://note.com/byoubyoubyou/n/n56b2fb990c8f

ちなみに、私はネット上の動画を音声のみ保存してMP3プレーヤーで聴いています。
湯船につかったり、寝転んだりしながら聴けるので、いいですよ。
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by chronoir2023 | 2023-11-19 19:35 | 講演 | Comments(8)

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