薬師丸ひろ子の歌う竹内まりや その3
2023年 08月 20日
これまでに2回書きましたが、今回の三回目が最終回です。
今回取り上げるのは、5枚目のアルバム『Sincerely Yours』の
最後に入っている「終楽章」です。
これもまたメロデーと歌声、そして、メロディーと歌詞の対応、
さらには伴奏の編曲も、とてもとても素晴らしいのですが、
歌詞に気がいくと、残念無念な感じが募ります。
(薬師丸さんのこの写真、ちょっと残念です)
今恋人の部屋に恋人と二人でいるのですが、
女性の方は別れを切り出そうとしています。
これまでもそうしようと何度もしたのですが、
相手のあどけない笑顔に「惑わされて」
言いそびれていたのでした。
「惑わされて」という言い方がひっかかりますが、
それを別にすれば、そういうこともあるだろうと
多少の共感を覚えます。
恋心が冷めてしまっても、相手が好人物だと、
別れを切り出しにくい。
確かにそういうことはあるでしょう。
この女性、すでに新しい彼氏がいるのです。
その男についていくことをすでに決めています。
それも仕方のないことでしょう。
人の気持は変わります。
過ぎた恋を断ち切ることも必要でしょう。
そこまではいいのです。
薬師丸さんの美声、歌い方が曲と歌詞に合っていて、
実に素晴らしく、
ひっかかりなどすぐに消え去ってしまいます。
問題はそのあと。
誰も悪くない、
「ただすべてが運命だ」
と歌い放つのです。
別れたいのは自分で、男性は望んでいない。
男性の方が運命だからしかたないな
と思ったり言ったりするなら分かります。
納得できます。
しかし、別れたい方の女性、なんであなたがそれを言うの?!
恥を知れ!
ところが、ところがです、この程度では終わりません。
最後に超弩級のトドメが来ます。
歌詞の最後は、こうです。
いつしか 笑い話になる時が来たなら
どこかで すれ違っても
知らない顔しないで 声かけてね
この状況でこんなことを言われたら、
言われなくても思っていると分かったら、
私は冷静でいられる自信がありません。
人生で一度もしたことがない
ビンタの一つ二つくれてやりたくなるのを
我慢するのに苦労するでしょう。
そして、かりにその人が際立って美しい人であったとしても、
一人になって冷静になってから、こう思うでしょう。
ああ、この段階で本性が分かってよかった、
見かけの美しさに「惑わされて」夢中になっていたけど、
向こうから別れてくれて、かえって幸運だった、
とんでもない人だった、と。
じゃあ、結局、双方めでたしめでたし?
まさか。
思考は感情に追いつきません。
未練を断ち切るには時間がかかります。
竹内まりやさん、嫌な女を描く天才です。
なお、薬師丸さんのアルバムには、
これまで取り上げた3曲の他にも竹内さんの曲がいくつか入っています。
それらの曲の歌詞は、全く問題ありません。
したがって、気持ちよくきけます。
ただ、少なくとも私にとっては、
気になる歌詞があることを除けば、
取り上げた3曲が全て曲として頭抜けて魅力的に聞えます。
何とも皮肉な事態で、本当に、困ったことです。
by chronoir2023
| 2023-08-20 19:30
| 歌
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