「リンツ」交響曲の思い出
2023年 06月 11日

1990年代、都心で独り暮らしをしていて、
クラシック音楽の演奏会にかなり頻繁に行きました。
しかし、感銘を受けた演奏は数えるほどしかありませんでした。
その数少ない中の一つに、
Bunkamura「モーストリーモーツァルト・フェスティヴァル」での
「リンツ」交響曲の演奏があります。
この曲自体は、中学生のころからレコードで聞き慣れていて、
モーツァルトの交響曲の中では、
40番、「プラハ」の次に好きな曲のつもりでいたのですが、
その真価に触れたと思ったのは、その演奏会ででした。
指揮者はシュワルツ、
管弦楽はモーストリー・モーツァルト・フェスティバル・オーケストラ。
一般的な評価がどの程度の方々なのかわからないのですが、
とにかく、終楽章の演奏が素晴らしかったのです。
この時はじめて、弦の4パートが次々に同じ音形を奏する箇所に注意が向きました。
弦の各パートが同じ音形を次々に奏し、
五つ目で二パートが合わさって大きくなり、
そして、音楽が飛翔する。
一つ目から四つ目までがもたらすわくわく感、
五つ目がもたらす充実感、
それに続く音楽がもたらす解放感。
その効果の素晴らしいこと!
なんだかもう奇跡が起こったかのようでした。
今スコアを見て確認しますと、こんな感じになっています。
第二主題が奏されたあと、第73小節からそれは始まります。
まず第一バイオリンが、他パートの長い音符に伴われて、
「・ドレミ/・ファミファ・/ラソファ/・ミレド」と弾き
(ト長調です。音高は移動ドで示します。・は八分休符、各音は八分音符、/は縦線です)、
それを第二バイオリンが5度上の同じ音形
「・ソラシ/・ドシド/・ミレド/・シラソ」で引き継ぎます。
次に、ビオラが最初の第一バイオリンの「ドレミ/~」を1オクターブ下で弾き、
そのあと、チェロとコントラバスが第二バイオリンの「・ソラシ/~」を
2オクターブ下と3オクターブ下で弾きます。
続いて、最初の「・ドレミ/~」を第一バイオリンがオクターブ上で
第二バイオリンが最初の音高で、つまり両パートがオクターブユニゾンで弾いてたあと、
今度は同オクターブのユニゾンで、解き放たれて飛翔するような旋律を奏でます。
再現部では、これがハ長調になって演奏されます。
その演奏を聴くまでは、そんな仕組みに全く気づかずにいたのです。
ド素人とはいえ、一体何を聴いていたんだか。
でも、無理もないな、とも思うのです。
その演奏会を経験してから、この曲を聴くときは、
その箇所を期待して待つのですが、
いつも期待は裏切られます。
モーツァルトの技が伝わってきません。
あの時の演奏はやはり奇跡だった、そう思えてきます。
