「リンツ」交響曲の思い出

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1990年代、都心で独り暮らしをしていて、

クラシック音楽の演奏会にかなり頻繁に行きました。

しかし、感銘を受けた演奏は数えるほどしかありませんでした。

その数少ない中の一つに、

Bunkamura「モーストリーモーツァルト・フェスティヴァル」での

「リンツ」交響曲の演奏があります。


この曲自体は、中学生のころからレコードで聞き慣れていて、

モーツァルトの交響曲の中では、

40番、「プラハ」の次に好きな曲のつもりでいたのですが、

その真価に触れたと思ったのは、その演奏会ででした。


指揮者はシュワルツ、

管弦楽はモーストリー・モーツァルト・フェスティバル・オーケストラ。

一般的な評価がどの程度の方々なのかわからないのですが、

とにかく、終楽章の演奏が素晴らしかったのです。

この時はじめて、弦の4パートが次々に同じ音形を奏する箇所に注意が向きました。


弦の各パートが同じ音形を次々に奏し、

五つ目で二パートが合わさって大きくなり、

そして、音楽が飛翔する。

一つ目から四つ目までがもたらすわくわく感、

五つ目がもたらす充実感、

それに続く音楽がもたらす解放感。

その効果の素晴らしいこと!

なんだかもう奇跡が起こったかのようでした。


今スコアを見て確認しますと、こんな感じになっています。

第二主題が奏されたあと、第73小節からそれは始まります。

まず第一バイオリンが、他パートの長い音符に伴われて、

「・ドレミ/・ファミファ・/ラソファ/・ミレド」と弾き

(ト長調です。音高は移動ドで示します。・は八分休符、各音は八分音符、/は縦線です)、

それを第二バイオリンが5度上の同じ音形

「・ソラシ/・ドシド/・ミレド/・シラソ」で引き継ぎます。

次に、ビオラが最初の第一バイオリンの「ドレミ/~」を1オクターブ下で弾き、

そのあと、チェロとコントラバスが第二バイオリンの「・ソラシ/~」を

2オクターブ下と3オクターブ下で弾きます。

続いて、最初の「・ドレミ/~」を第一バイオリンがオクターブ上で

第二バイオリンが最初の音高で、つまり両パートがオクターブユニゾンで弾いてたあと、

今度は同オクターブのユニゾンで、解き放たれて飛翔するような旋律を奏でます。


再現部では、これがハ長調になって演奏されます。


その演奏を聴くまでは、そんな仕組みに全く気づかずにいたのです。

ド素人とはいえ、一体何を聴いていたんだか。


でも、無理もないな、とも思うのです。

その演奏会を経験してから、この曲を聴くときは、

その箇所を期待して待つのですが、

いつも期待は裏切られます。

モーツァルトの技が伝わってきません。


あの時の演奏はやはり奇跡だった、そう思えてきます。



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by chronoir2023 | 2023-06-11 19:58 | クラシック音楽 | Comments(0)

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