マリナーのモーツァルトの40番
2023年 05月 07日

マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団による
モーツァルトの「ハフナー」「40番」ほかが入ったのLPでした。
昭和40年代の後半の話です。
ごく普通のサラリーマン家庭の中学生にとっては高額でしたが、
そのことよりも、クラシック音楽のレコードを買うことが身の程知らずのように思えて、
レコード店のレジに持って行くのに勇気を振り絞らなければなりませんでした。
当時FMでその曲のその演奏が流れることが多く、
気に入っていたからこそ購入したものであり、
購入後は何度も何度も繰り返し聴いたものですが、
その後は興味の幅が広がり、長らく聴かずにいました。
それから半世紀を経て、今聴いてみると、
このマリナーの40番はやはりとてもよく、
あらためてこの曲の素晴らしさを実感しました。
問題は、その後です。
マリナーの演奏を聴いた後に、
有名なワルター指揮コロンビア交響楽団の演奏をあらためて聴くと、
出だしのタラタータラタータラターラーはいいのですが、
その後の部分がタララッタララッタララッタと聞こえてしまい、
つんのめるようなその感じがやけに気になりました。
極端に言えば、ソラエッチラホッチラサッサ、です。
「駕籠舁き?」と言いたくなります。
昔は全く気にならずに愛聴していたのに、
今では気になって心静かに聴くことができません。
思い立って手持ちの他の演奏者のものをいくつか聴いてみると、
ワルターの演奏がそのように聞えてしまった後では、
それと似たように聞えてしまうものがあることに驚きました。
同じワルター指揮のNYPとのスタジオ録音も
BPOとの1950年のライブ演奏も同じ感じに聞えますし、
他の指揮者のもの、テイト指揮イギリス室内O(EMI盤)、
クリップス指揮コンセルトヘボウ(デッカ盤)、
コープマン指揮アムステルダムバロックO(エラート盤)、
バレンボイム指揮VPO(2012年ライブ、NHKFM)、
ヴァント指揮NDR(2000年ライブ、NHKFM)、
ブロムシュテット指揮N響(2014年ライブ、NHKFM)も
やはり駕籠舁き風に聞えます。
全音のポケットスコアを見ますと、
タラはスラーのついた八分音符二つで、
ラッは前からも後ろへもスラーがかかっていない四分音符です。
休符はありません。
普通に考えれば、
タララッタララッタララッタではなく
タラタータラタータラターターとなるはずではないでしょうか。
マリナーの演奏はまさにそうなっています。
ワルターに比べてかなり速めの演奏ですが、
走りすぎの感じはなく、非常に美しく、品格とメリハリがあり、
聴いているともうこれしかないと思ってしまうようなものになっています。
面白いのは、ジュリーニ指揮ニューフィルハーモニアの演奏で、
これは、タラタータラター~になってはいるものの、
そこが1拍目と3拍目だからということなのでしょうか、
ターの部分が強調されて聞こえ、音楽の自然な流れを壊しているようで、
これはこれでかなり気になります。
もう一例挙げますと、
2012年5月のコリン・デイヴィス指揮ドレスデンシュターツカペレのライブ演奏では、
3~5小節目はタラタータラタータラターターと聞えますが、
同形の7~9小節目、22~24小節目、26~28小節目は、
タララッタララッタララッタ風に聞えます。
意図的ではなく、結果的にこうなったということなのでしょうか。
だとしますと、この部分に明確な思い入れはなく、
適当に(=いい加減に)演奏したということになってしまいます。
ライブならではの、ということでしょうか。
聞き慣れていたはずの演奏も時を隔てて聴き直すと、
いろいろなことがわかってくるものだとあらためて思いました。
老後の楽しみとして、手持ちの音源の聴き直しを少しずつ始めようかとも思うのですが、
たぶん気が向いたときに時たま、ということになりそうです。
